競艇において最も興奮する「決まり手」は何ですか?
6種類(逃げ・差し・まくり・まくり差し・抜き・恵まれ)ある中、半数以上の競艇ファンは「まくり」と回答するのではないでしょうか。
全速ターンで置き去りにしていくのは絶景ですが、まくりだけど別の呼び方をする超絶テクニックがもう一つ…
内側艇を沈めて先頭に立つツケマイ。
正式な決まり手ではないものの、舟券を買っていなくても興奮する決まり手。まさに”究極のまくり”と呼ぶにふさわしい技だと思います。
そこで今回は、決まれば拍手喝采の「ツケマイ」について、基本的な特徴から凄さの分かるレース動画まで解説。最後まで読めば100%理解できるはず。
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競艇のツケマイとは?
競艇のツケマイとは、内側にいる艇の外側を全速でターンする戦術のこと。
内側の艇にピッタリとツケて回ることから「ツケマイ」と呼ばれていますが、ネットの情報を調べる限り正式な語源はないっぽい。
また、マイに関しては諸説あり。”舞う”という表現を言い換えた説や、”回る”を言い換えた説など。その為、解釈は個々の自由で良いでしょう。
ツケマイは「まくり」の一種
逃げ・差し・まくり・まくり差し・抜き・恵まれ
ツケマイは「まくりの一種」です。
決まり手は6種類のみで、ツケマイという決まり手は存在しません。よって、レース結果に記載されることはなく、あくまで戦術のひとつとして覚えておきましょう。
2008年までは決まり手の一つだった
現在はツケマイで勝利しても「まくり」と表記されますが、2008年に決まり手が統一されるまではそのまま表記されていました。
なぜ統一されたのかは不明です。
ただ、ツケマイはまくりから派生した技なので、明確に見極めるのが難しかったのかも。実際、どちらか微妙なレースは多々ありますし…
まくりとツケマイの違いは?
まくり | 2コースより外の艇が、外側から全速旋回して1着になること。 |
ツケマイ | 2コースより外の艇が、内側艇のギリギリ外側を全速旋回して1着になること。 |
まくりとツケマイの意味はほぼ同じ。
そのうえで違いを説明すると、まくりは2~6コースの艇が外側から攻める決まり手の総称。
一方、ツケマイは同様の流れで「内側にピッタリつけて強引に抑え込む」といった、より具体的な攻め方です。
また、まくりは他艇の邪魔をせず旋回することが多い中、ツケマイは内側の艇を沈めて1着になる違いがあります。
言葉だけで理解するのは難しいので、後ほど動画でも解説しますね!
ツケマイが効果的だと言われる理由
1艇身以上先行していたり、内側の選手が凹んでしまった場合、全速ターンでまくる展開が生まれます。しかし、スタートが揃ったり凹む選手がいない場合、まくりが決まる可能性は低くなります。
そうした状況を打破できるのがツケマイ。
横並びの状態(同体)であってもお構いなし!内側艇のギリギリ外側を回り、引き波に乗せてキャビらせることが可能。
1周1マークでほぼ勝敗が決してしまう競技において、ツケマイ巧者であれば発動できるシーンは様々。だからこそ、効果的な技と言われているのです。
もちろん、全速ターンを抑えつける力と、ピッタリツケて回り続ける旋回力が求められるので、並みの選手だと成功率は低め。
要は、限られた選手にしかできない”まくり技術”と言えます。
ツケマイが決まりやすい条件は?
穏やかな静水面
ツケマイは全速ターンで攻める戦法なので、波が立っていない静水面がベスト。江戸川のように荒れている水面では決まりにくく、外側へ流されることが多いでしょう。
伸びに優れた上位モーター
モーター性能には大きく分けて「出足型 or 伸び型」。減速が必要となる差しは出足重視、ツケマイなどのまくりなら伸び重視のモーターが有利。
また、チルトを跳ねて”伸び特化”にしている選手がいる場合は、差しよりまくりで攻める可能性が高くなります。
「ツケマイ」と「先マイ」の違いは?
ツケマイと似た専門用語に「先マイ」という用語もありますが、マイは同じでも全く違う意味を持ちます。
先マイとは、他の艇より先に回る(進入する)こと。ターンマークを先に進入して引き波を立たせ、後続艇を失速させたり、ターンしにくくする効果があります。
ですが、先マイするには減速が必須。
ターン後、スピードを乗せるまで時間が掛かってしまうので、簡単に内差しされるデメリットも。
先マイが効果的に働くのは、先頭が1艇身以上先にいっているシーン。
先マイを敢行すると相手は差し構えとなり、減速しすぎてチャンスとなるケースがあります。その少ないチャンスを狙う選手は多いです。
ただし、先マイが成功する展開はそう多くありません。特に、G2以上のグレードレースに出場する選手は”捌く技術”が高く、決まる確率はそこまで高くない印象。
先マイと見せかけて差しに切り替えるトップ選手も!選手同士の駆け引きが競艇の見どころでもあります。
ツケマイのメリット・デメリット
少し大げさに例えると、ツケマイは成功すれば天国、失敗すれば地獄。そう言っても過言ではないほど、リスクを伴った”まくり戦法”です。
では、ツケマイにはどのようなメリット・デメリットがあるのか?
ツケマイのメリット(長所)
- 不利な状況でも逆転することが可能
- 競っている艇を減速させて追い抜く
- モーター性能をフルに発揮できる
ツケマイ最大のメリットは形勢を逆転できること。
引き波に乗ると減速してしまい、スピードを乗せるまでに時間を要します。その隙をついて一気に引き離すことができます。
それと、ツケマイは全速ターンが基本となるため、チルトを跳ねて伸びに特化した選手、そもそもモーター性能が高い選手は決まりやすい傾向にあります。
もちろん、最も大切なのはターン技術ですが、どんな選手であっても低調モーターで成功させるのは至難の業と言えるでしょう。
ツケマイのデメリット(短所)
- 全速ターンにかかるGで膨らんでしまう
- 内側艇に抵抗されて押し出される
- 着外、転覆などに陥るリスクあり
ボートレースは時速60㎞を超える競技。
そのスピードで全速ターンをすると、半端ない遠心力(G)が働きます。このGを抑えることができなかった場合、外側へ大きく流れてしまい、後続の艇に抜かれるリスクがあります。
また、内側の艇に強く抵抗された時も同様です。逆に壁となって使われてしまい、自分だけ外側へ押し出されて戦線離脱してしまうケースも。
1着を狙うつもりが大きく着を落としたり、ボートを抑えきれず転覆する光景はよく目にします。
このように、ツケマイを敢行する側には大きなリスクを孕んでいるのです。
ツケマイが上手い選手のレース動画
言葉のみでは理解しづらいと思うので、実際に「ツケマイ」をしている動画を紹介します。
内側艇を沈めた畑田汰一のツケマイ
期待のルーキー「畑田汰一」が魅せたお手本のようなツケマイ。
蒲郡で開催された2021年1月24日のサンベリー蒲郡いちご杯。畑田選手は3号艇(3コース)の進入となりますが、コンマ25とスタートで若干で遅れてしまいます。
何とか伸び返して1マークを迎えるも、2号艇に先行されバックストレッチで外側から2着を狙う展開。ポジション的に不利な状況かと思われましたが…
1周2マークで2号艇を沈める豪快なツケマイを敢行!
実況アナからも「好旋回の畑田汰一」と声を荒げるほど見事に決まり、そのまま抜かして2着でゴール。
正直、こんなツケマイをされたら2号艇に勝ち目はなし(笑)畑田汰一のターンが上手すぎただけで、トップレーサーでもまくられていたはずです。
伝説となった1億円のツケマイ【瓜生正義】
競艇界のトップを決める戦い「グランプリ(賞金王決定戦)」。
賞金1億円を懸けて6名の選手で争われ、1着を獲った者がその年の”賞金王”を手にします。(※優勝しても賞金王にならないケースあり)
2021年グランプリ決勝戦の出走メンバーは「峰竜太・丸野一樹・平本真之・瓜生正義・白井英治・毒島誠」。
当然、賞金ランキング1位で順当に勝ち進んだ「峰竜太」が断トツ人気。その証拠に、イン逃げを軸にしたオッズは万舟が1つもなく、それ以外はほぼオール万舟といった状況。
95%以上の競艇ファンは「峰の優勝」を確信していたでしょう。
しかし、4コース”瓜生正義のツケマイ”により、競艇史に残す大事件を引き起こすことなります。
1マークで起こったヤバすぎるツケマイ
ほぼ横並びのスリット隊形。1コース峰にとってイン逃げする絶好の展開であり、他の艇が1着になるのはかなり困難な状況。
しかし、瓜生の舟足は予想以上に良く、伸びで勝った瓜生は一気に幅を寄せて「通常のまくりからツケマイに切り替え」をしたように見えます。
本来はもっと外側をまくっていくのが3コースの走り方。
これだけピッタリと艇をツケられてしまうと、峰が侵入できる進路は限られてしまいます。
さらに、瓜生が通過した後には引き波が立つので、この時点で勝敗は決していたと言うべきかもしれません。
コンマ07の好スタートを決めた峰竜太に対し、これほど美しいツケマイが決まるなんて…。誰一人予想できなかったのでは?
このツケマイに沈められた峰はターンマークに激突して転覆。
後続の丸野・平本・毒島も巻き込まれる大惨事となり、ゴールできたのは優勝した「瓜生正義」と、唯一かわすことができた「白井英治」の2人だけとなりました。
その結果、3連単・3連複は不成立。
ほぼ全てのファンが峰から購入していたこともあって、96.18%となる「41億1426万3700円」の舟券は返還。
最も盛り上がるグランプリ優勝戦において、最悪の幕引きとなってしまったのです。
峰竜太に怒りを覚えるのは分かるけど…
舟券を購入していた場合、妨害失格となった峰竜太を責める気持ちは分かります。
でも、誰しも1着を獲るために死ぬ気で走っており、不利な状況を打破しようとして起こった不幸だと感じています。また、レース後にはしっかりと謝罪しています。
迷惑をかけました。油断したわけではないけど、瓜生選手が上手でした。ターンマークにぶつかる前にまくられていました。プレッシャーに負けた感じはなかったけど、うまくいかなかった。すみません。大勢の人に迷惑をかけてしまって本当にすみませんでした。
出典:スポーツ報知
なんにせよ、瓜生正義のツケマイが本当に凄すぎた。
あんなツケマイを決められたら、SG常連の選手であっても1マークを乗り切るのは相当難しいはず。なので、峰選手を責めるのではなく、瓜生選手を称えるべきかと。
峰竜太を沈めたツケマイ【菅章哉】
ツケマイが成功すると、格上相手でも勝てることを証明した一戦。
4号艇6コースにはチルト3度の元アウト屋「菅章哉」、そして6号艇2コースには艇界のスーパースター「峰竜太」。峰の前づけもあって「162354」とグチャグチャの進入隊形となったレース。
峰選手がスタートを決めて直まくりに行ったところを、菅選手も6コースから全速でまくっていきます。
1マークの攻防は菅に軍配が上がりますが、2マークで再び峰の差しが届きます。峰に内側を取られたらほぼ勝機なし。
そう思った瞬間、外側から全速ツケマイが炸裂!
このツケマイがこれ以上ないほど見事に決まり、引き波で減速した峰選手を引き離すことに成功。
マクール副編集長の三吉さんがおっしゃる通り、自然と声が出てしまうまさに神業。後世に残るツケマイといっても過言ではないと思います。
まくり屋の選手は常に全速ターンなので、ツケマイの技量も高いことで知られています。
SGで豪快なツケマイ2連発【實森美祐】
個人的に推している女子レーサーの「實森美祐」選手。
ツケマイを披露したのは、2022年5月に開催された宮島SGオールスター。しかも、6R・11Rの2戦ともツケマイで1着に輝きました。
まず見せ場を作ったのが、1号艇で迎えた6R。1周1マークで原田幸哉に並ばれるも、2マークで完璧なツケマイが炸裂!この勝利でSG初勝利を果たします。
さらに、この日2回目の出走となった11R。平本、寺田、毒島らが内側にいる中、4カドからトップスタートを決めた實森のツケマイがまたしても決まります。
SG未勝利だった女の子が1日に2勝し、SG常連たちをまくりで負かしたのです。
實森美祐は紛れもない本物!遠藤エミに次ぐ「女子2人目のSG制覇」を達成してくれる予感しかありません。
ツケマイが上手い&得意な競艇選手
これまでレースを見てきた中で「ツケマイ巧者」と感じた競艇選手を紹介します。ただし、紹介する以外にも上手な選手は沢山いるので、あくまで一部と思ってご覧ください。
※以下のリンクは公式プロフィールページ、または当サイトの記事に飛びます。
紹介した選手は全員”ツケマイ巧者”であり、まくり技術の長けた実力者。
Youtubeで検索すれば関連動画が見つかると思うので、気になる選手がいたらぜひ調べてみましょう!
改めて感じたのは、まくり(ツケマイ)が得意な選手は上位勢ばかり。上に行くには必須テクニックなのかもしれませんね。
まとめ
競艇の「ツケマイ」という用語を知っていても、舟券予想に役立つことはないかも。ただ、ボートレースを楽しむためには必須の知識であり、知って損することはありません。
今後、自然と声が出るようになれば一端の舟券師(笑)
何も知らない時より10倍は楽しめるはずなので、理解できなかった箇所は再度チェックすることをおすすめします。
コメントお待ちしてます!