競艇(ボートレース)は国が管理しているギャンブルであり、厳格なルールが多数あります。選手は競艇場以外の場所でも、決められたルールに従って行動しなければいけません。
仮にそのルールを破った場合は「違反ペナルティ」を受けることに。
内容は様々ですが、減点や出場停止、さらには選手の進退にかかわる重い処分が下ることも。
今回はそれらの違反行為について、「○○違反」と名のつくものに絞って紹介します。
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ルールが複雑な「待機行動違反」
競艇の違反で最もよく目にする「待機行動違反」。
選手たちがピットアウトしてから大時計が回り始めるまでの待機行動には、複雑なルールがいくつもあります。
- 無理なコースの奪い合いを防ぐこと
- 内側の艇に進入までの時間稼ぎをさせないこと
- 他の選手の動きを妨げないこと
待機行動に違反項目を定める目的は主に3つ。
待機行動違反を取られる行為
待機行動のルールはとてもややこしいので、ここではわかりやすく「これをやったら待機行動違反」という書き方で紹介します。
- ピットアウトからスタートまでに、転舵(ハンドルを大きく切ること)を3回以上行う
- 右方向に転舵する(ハンドルは原則、左方向にしか切れない)
- 直進せず、外側に流れて助走距離を稼ぐ(1コースは2マークとの間隔、他のコースは左にいる艇との間隔が空きすぎると違反)
- わざとエンストさせる(故意でない場合、すぐ再始動すればセーフ)
- ターンマークなど水面上の設備と接触する(手で触るのも違反)
- 150メートル見透し線を過ぎた艇の内側に入る(割り込み行為)
- 追突、急減速などで他の艇を妨害する
待機行動違反については、転覆などのトラブルが起きた場合(発走やり直し)を除いて失格や返還の対象となりません。また、審判からのアナウンスもレース後に行われます。
待機行動違反のペナルティ
待機行動違反によって、選手に科されるペナルティは以下の通り。
- 違反1回につき:事故点2点(級別審査に適用)
- 節間1回目:減点(マイナス7点)
- 節間2回目:賞典除外
- 節間3回目 or 悪質な違反は1回でも:即日帰郷
- 準優勝戦、準優進出戦での違反:賞典除外(レースの着順に関係なく翌日は一般戦回り)
ちなみに、優勝戦で待機行動違反を犯した場合はどうなるのか?
節間最後のレースとなるので、開催中のペナルティはなし。賞金の減額もありません。
ただし、同じ競艇場への斡旋は、出走数の制限などといった制裁が与えられることがあります。
引退勧告まである「整備規程違反」
競艇のボートに使われる部品や燃料は、すべて競艇場備え付けのものとなります。選手は決められた範囲内で整備を行うルールがあり、プロペラを含めて外からの持ち込みは一切できません。
この規程を破った場合に適応されるのが「整備規程違反」。
整備規程違反には、選手の過失や不注意によるものから、バレないよう意図的に行おうとする悪質なものまであります。
不正な整備を行った艇での出走は、レース中の大きな事故につながる恐れも。よって、整備に関する違反を犯した場合、とても厳しいペナルティが科せられます。
過去にあった整備規程違反の例
これまで発覚した例としては、主に以下のような違反行為があります。
いずれも公正なレースを妨げる原因となるものばかりで、処分の決定は褒賞懲戒審議会に諮られることに。
- 私物の部品や燃料を外から持ち込んだ、あるいは整備に使用した
- 認められていない方法で不正に整備を行った
- 整備不良によって、レースで事故(エンスト、不完走など)を起こした
- 選手本人以外の人物が整備を行った
最後の項目については「レース開催中の整備は選手1人で行う(自主整備)」の原則によるもの。
同じ公営競技”オートレース”では選手間で整備を手伝うことも許されていますが、競艇では違反行為となります。
大物レーサー3選手が艇界を去った1988年
選手が1人で整備を行う現在の「自主整備」が制度化されたのは1986年頃。
不得意な選手にとっては辛い改正となった一方、整備力が向上し、個々の成績アップに繋がったと言われています。
とはいえ、この改正によって当時多発したのが、私物部品の持ち込みや使用の摘発など、整備力に不安がある選手の不正行為です。
1988年には、トップクラスで活躍していた3名の選手が相次いで整備規程違反を犯し、引退勧告へと追い込まれるという出来事もありました。
この中にはSG10勝、優勝回数179回という大記録を打ち立てていた名選手も含まれており、オールドファンにとっては忘れられない年となったのです。
スター選手にも多い整備規程違反
整備規程違反で多いのは、選手本人が注意義務を怠った、あるいは違反を認識していなかったケース。
SGで活躍するA1級レーサーの中にも、過去にやらかしてしまった事例があります。
原田幸哉
艇界屈指のトップレーサ「原田幸哉」。
違反を犯したのは2013年5月の平和島G1周年。2日目で転覆事故を起こした後の整備が十分でなく、4日目の後半レース中に大きな失速をしてしまいます。
その後、失速の原因が選手責任の整備不良と判明したため即刻帰郷に。
褒賞懲戒審議会の処分は3ヵ月の出場停止、1年間のSG選出除外と重く、2014年前期はB2級陥落となってしまいました。
馬場貴也
滋賀支部を代表するSGレーサー「馬場貴也」。
2017年の地元(びわこ)お正月開催で、オイル交換時の不注意が原因による整備規程違反を犯してしまいました。
馬場は即刻帰郷となったものの、軽微な不注意ということで出場停止処分は1ヵ月にとどまりました。
しかし、地元である”びわこ競艇場”では1年間走らせてもらうことができず、それが何よりも辛かったと本人はインタビューで語っています。
この間、一から気持ちを入れ替えて臨んだという馬場貴也。翌2018年には初めてのSG制覇をチャレンジカップで飾っています。
峰竜太
No.1レーサーの「峰竜太」も、若手時代に整備規程違反をやってしまった過去があります。
2009年3月の地元唐津開催。同支部の先輩・西和則(2013年引退)の整備を手伝ってしまい即刻帰郷。
2009年といえば、まだプロペラが選手持ちだった時代です。プロペラ調整に関してはアドバイスまでは良くても、作業に協力することは許されていません。
西和則のプロペラに直接手を掛けてしまったことで整備規程違反となり、両選手とも3ヵ月の出場停止、1年間のSG選出除外という重い処分が下されました。
出走回数は足りていたためA1級は維持できましたが、SGは2010年のダービー(全日本選手権)まで出場資格を失ったのです。
意図的な整備規程違反を2回もやった選手
ファンの間で有名なのは”シラケン”こと兵庫支部の「白石健」。この選手は過去に意図的な整備規程違反を2回も犯しています。
1回目は2002年10月の江戸川一般戦。
艇の伸びを良くする目的でダンボールを使い、エンジンの高さを不正に操作していました。
ほどなく違反が見つかり、白石は4日目のレースを走ることなく帰郷となりました。この時は6ヵ月の出場停止処分を受けています。
2回目は2016年12月の大村一般戦。
今度はエンジンの原形を変えるという違反によって2ヵ月の出場停止処分。さらに、2回目の整備規程違反を重く見た選手会からも1年間の自粛勧告を言い渡され、合計1年2ヵ月もの期間レースから離れることとなりました。
実は、1回目と2回目の間となる2012年にも検査指示違反(待機行動中に工具を使ってモーターを調整する行為)で4ヵ月の出場停止を食らっていたのです。
正直、引退勧告されてもおかしくないレベルですが、実績を考慮したうえの判断だったのかもしれません。
余談ですが、白石健といえば「松本勝也」を慕っていたひとり。
2020年の近畿地区選手権で松本選手がこの世を去った翌日、準優進出を決めた後にインタビューで号泣した姿はとても印象的でした。兄弟子のためにも、違反を犯すことなく活躍してほしいですね。
選手の素行にかかわる「管理規程違反」
競艇選手は競艇場の中へ入ってから帰るまでの時間、競艇場による“管理”の状態となります。この体制にある中で守らなければならないルールが「管理規程」です。
破ってしまうと管理規程違反となり、多くの場合には出場停止やSGあっせん除外といった重いペナルティが与えられます。
特に厳しい通信機器の持ち込み
開催前日となる前検日だけでも、規定の制服着用や選手登録手帳の提示など、さまざまな管理に関する項目があります。
中でも特に厳しいのが「選手の私物検査」です。
八百長などの不正防止をするため、選手は通信機能がついた機器を宿舎やレース場に持ち込むことはできません(競走会預かり)。
また、開催中は外部との接触が禁じられており、決められた敷地内から外に出ることも違反行為となります。
以前なら持ち込めない私物はスマホや携帯電話ぐらいでしたが、最近は腕時計やゲーム機にも外部と通信できるものがあり、金属探知ゲートの導入など検査体制がさらに厳しくなっています。
競艇の八百長に関しては以下の記事をご覧ください。
うっかり酒を持ち込んで前検不合格
管理規程違反には、以下のようなうっかり系の例も過去にありました。
平和島:BBCトーナメント◇前検日
出場予定だった村松修二(広島)が管理規程違反(酒類持ち込み)のため、前検不合格となった。
※2019/11/27 日刊スポーツより一部抜粋
宿舎へのアルコール持ち込みは管理規程違反となります。
本人は承知していたでしょうが、噂では前日に神社へお参りに行った際、もらった御神酒をカバンに入れたまま競艇場へ入ってしまったのだとか。
村松修二は前検不合格となり、平和島でレースを走ることなく帰郷。悪質でない選手の不注意と判断されたのか、出場停止処分は受けませんでした。
ところが2020年の夏、選手としての体面汚し等によって今度は2ヵ月の出場停止に。
これも噂ですが、コロナ感染防止の自己管理が必要な中、地元で不用意な会食を開いたことでクラスターの発生源となってしまったのが原因のようです。
これによって、8月のSGボートレースメモリアル、9月のヤングダービー出場を逃す結果に。
レース中の判断が難しい2つの重大違反
レース中での違反といえば、フライングや不良航法。
しかし、それ以外にも安全を守るためのルールが存在し、違反した場合は失格など重たいペナルティが課されることもあります。
優先艇保護違反
レース中に転覆やエンストなどの事故艇が出た場合、競走水面には救助艇が出動して選手の救助がはじまります。
この時点で走っている選手はゴールまで追い越し禁止となりますが、このルールに反した場合に適用されるのが「優先艇保護違反」です。
追い越し禁止の指示が出た後、艇を追い抜くと違反になりますが、優先艇の判断については審判でも難しい状況があります。
それは「複数の艇が並走していた場合」です。
例えば、1周1マークで転覆事故が起きたと仮定しましょう。
通常はただちに追い越し禁止とはならないため、救助艇と関係のない2マークはフリーで行われます。問題は2艇以上が接戦のまま2周目に入った時。
優先艇保護が適用されるのは事故艇付近となるので、その手前となるホームストレッチでの隊形が問題となります。
この時点で内外に関係なく、明らかに艇が前へ(基本は1挺身以上)出ていれば順位は保護されます。
しかし、艇の間隔が重なった状態で直線を走っている場合、原則として内側にいる艇が優先艇となります。
よってこの状況で、優先艇でない外側の選手が前へ出てしまうと「優先艇保護違反」を取られてしまうのです。
ただし、違反かどうかの判断は各競艇場の審判長に委ねられるので、微妙な間隔のまま外側から前に出てセーフとなることもあります。
優先艇保護違反は失格となりません。後で着順が変更されることはなく、舟券もそのまま有効です。
過去の案件を調べた限りですが、選手への処分については賞典除外がほとんど。とはいえ、過失が大きい場合は、意図的な順位変動として即刻帰郷となったケースもあります。
松井繁が優先艇保護違反を犯したレース
ボートレース界のレジェンド「松井繁」が、優先艇保護違反で賞典除外となったレース。
1周2マークを回った後、3着争いはほぼ横並び状態。
内側に中島孝平、外側に松井繁といった状況で、ルール上は中島が先着となります。ただ、松井はルールを無視してしまい優先艇保護違反。
松井は3日目終了時点で得点率6位。4着でも予選突破できていたのに…
航走指示違反
レース中の事故によって救助艇が出てきた場合は「航走指示違反」にも気をつけなければいけません。指示の内容については競技規程にも定められています。
◇モーターボート競走競技規程 第23条2項
モーターボートは、ターンマーク付近において救助艇又は事故艇がある場合は、審判委員長の指示により、その外側を(救助艇又は事故艇の外側に安全な間隔がない場合にあっては、その内側を)航走しなければならない。ただし、事故艇が移動している場合その他やむを得ない場合は、この限りでない。
事故艇が出た後、選手は原則として「救助艇の外側」を走る決まりとなっています。
ただし、転覆艇や救助艇の外側に安全なスペースがないと審判が判断した場合、コース上の航走灯に「内」の表示を出して選手に指示するのです。
この場合は、外側を走ってしまった選手が失格を取られてしまいます。
この違反で多いのは航走灯の確認ミスです。
指示のない内側をうっかり走ってしまったり、救助艇が作業中に外へ流されたことで、周回の途中で「内」の表示が出ていたことを見落とした事例もあります。
2022年3月の津オールレディース。
2周2マークで2艇が絡む事故。事故艇の外側を航走する指示が出ていた中、先頭を走っていた池田浩美は内側を航走し、航走指示違反で失格に。
転覆や妨害失格ならまだ諦めもつくでしょうが、このケースは完全なるミス。池田1着を持っていたファンは相当ブチギレだったはず。
航走指示違反は救助の妨害行為にもつながるので、違反した艇はレース中に失格の判定が下されます。選手は即日帰郷、当該競艇場からの斡旋停止など、非常に重たいペナルティが下されます。
非常に稀ですが、審判長の判断ミスが原因で失格艇を出してしまうことも。
つまり、選手責任失格を理不尽に負わされてしまったケース。2008年12月の多摩川開催において、審判長自ら不手際を認めるハプニングもありました。
◇多摩川3Rレース不成立審判長の判断ミス
26日の多摩川競艇3Rが5艇の航走指示違反によりレース不成立となった。
出典:日刊スポーツ
1Mで若女井正が落水し、事故艇の外側を回る危険信号灯のみ点灯された。まくって先頭の渡辺史之は2周1Mで指示通り旋回し後続も追走。だが、3周1Mでは救助艇と事故艇が外に流れ込み岸壁に接近したため、外側への回りしろがないと判断し、5艇は内側を走行した。これが航走指示違反に当たるとし5艇は失格。渡辺、高橋二朗、大西英一、後藤翔之、亀山雅幸は即日帰郷となった。
しかし、リプレーなどでは3周目に事故艇の外を安全に回れるスペースはないと見られ、渡辺も「あの外は回れない」と不満を漏らす。ベテラン大西も「審判の誤審か救助艇のミス。納得はしてない」と憤った。
30~40人のファンからも抗議が寄せられた。審判長は「自分の判断が甘かった。厳しく言われれば判断ミス」と、内側を通る指示を出さなかった不手際を認めた。担当理事も「お客さんはもちろんだが、選手にも気の毒なことをした。審判長はすぐに代えました」と語った。
それでも判定が覆ることはなく、5選手は責任失格。ルール上とはいえ、あまりにもお粗末で後味の悪い結果となった。
ファンだけでなく、選手までもが審判に異議を唱えた珍しい例です。
最も罪が重い「モーターボート競走法違反」
昭和26年に公布されたモーターボート競走法は、競艇を公正に実施するための根幹となる法律です。
競艇選手だけでなく施行者や関係者、そして我々ファンも関係するものとなり、違反した場合には刑法に則った厳しい処罰が待っています。
八百長で逮捕された西川昌希(引退)
三重支部に所属していた当時30歳の元A級「西川昌希」が、2020年にモーターボート競走法違反で逮捕、起訴されました。
容疑は「賄賂を収受して不正行為を行う」第72条の違反、つまり八百長です。
八百長疑惑のあるレース映像
西川昌希は2019年秋に突然引退届を提出。八百長の行為が発覚したのはその直後です。
レース中にわざと順位を操作する行為を繰り返し、同じく逮捕された親族の男から計3725万円を受け取った罪となります。名古屋地裁で懲役3年、追徴金3725万円の実刑判決となったこの事件は、テレビや新聞でも大きく報道されました。
2015年にはSGボートレースクラシックで準優まで進んだ実績もある選手。宿舎にスマホを不正に持ち込んで八百長を行っていたことから、先ほどの「管理規程違反」にも触れる不正となります。
興味本位という身勝手な動機で犯行に及んだ西川はもちろん、日常的に通信機器を持ち込めることができた、当時のずさんな管理体制も批判されるべき。
熱狂的な競艇ファンのひとりとして、2度と起きてほしくありません。
まとめ
今回は競艇に関する違反についてまとめました。
同じ違反でも、減点で済むものから選手生命を絶たれるものまで、科せられるペナルティはさまざま。
厳しすぎない?と感じる罰則もありますが、金銭を賭ける競技である以上、公正・中立なレースを厳しく取り締まるのは当然のこと。
今後も、新聞やネットニュースなどで紹介した違反を目にすることかもしれません。その選手がどんな過ちを犯したのかを理解するための参考になれば幸いです。
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