競艇は内側ほど有利な競技。特にインコースは断トツで勝率が高く、トップレーサーだと9割ちかい勝率の選手もいます。
そんな中、自ら不利なアウトコースへ進入する「アウト屋」と呼ばれる選手も。
ただ、出力低減モーターや持ちペラの廃止により、アウト屋の数は減る一方。ひょっとしたら、数年後には絶滅しているかもしれません。
そこで今回は、競艇ファンを魅了し続ける「アウト屋」について、基本的なことから代表的な選手までまとめていきます。
どんな状況でも内側のコースへ進入してくる「イン屋」は以下をご覧ください。
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なぜアウト屋は6コースを好むのか?
アウト屋たちは最も勝ちやすい1号艇だろうが、大外の6コースに回ってしまう。なぜそのようなことをするのか?私なりに考察してみました。
スタートまでの助走距離を合わせやすい
スタートの助走距離はインコースほど短くなるうえ、水面状況次第では想定以上に流されることも。
また、スタートを待っている際、艇を横や反対に向ける行為はNG。ボートの後ろ側に立っている光景をよく見ますが、推進力を抑制するのが目的です。
その点、6コースであれば他の艇を気にする必要はなし。
自分が最も得意とする距離を保つことができます。スタートを合わせる技術さえあれば、ベストなタイミングでスタートできるのです。
最もスピードが乗り、展開は自由自在
6コースからの進入であれば、自分より外側に艇はいません。
スタートを合わせることができれば「差し・捲り・捲り差し」など、内側の展開に合わせた動きが可能。さらに、最長の助走距離によって「最高スピード」で1マークを旋回できるメリットもあります。
- トップスタートなら大外を捲って全艇を置き去りに
- 5号艇が凹んだ場合は、内側に絞ってまくり差しの展開
- スタートが揃ってもMAXスピードで優位な展開運び
もちろん、これらはスタート力&旋回技術があってこそ。アウト屋とは、限られた逸材にしかなれない戦い方と言えるでしょう。
強い選手に勝つための手段
後ほど紹介する選手たちは、優れた技術を持ち合わせています。とはいえ、1,600人ちかくいる競艇選手にはさらに上が沢山いるのも事実。
その選手に勝利するには、技術だけではなく「スタートを決めて捲る」ことが最も優位に立てる戦い方です。
SG常連選手でも、大外から全速ターンで捲られてしまうと何もできません。その展開に持ち込むため、0台のスタート直後にどの艇よりも伸びのある速度に到達させることが重要となります。
アウト屋は6コースを好んでいるというよりは、自分より技術のある選手に勝つことが目的なのかもしれません。
絶滅危惧種「アウト屋」の競艇選手
さて、当記事の本題でもある「アウト屋の競艇選手」を紹介していきます。
アウト屋のレジェンド「阿波勝哉」
選手名 | 阿波勝哉(あわかつや) |
生年月日 | 1973年4月18日 |
登録番号 | 3857(79期) |
デビュー | 1996年 |
身長/体重 | 165㎝/57㎏ |
所属支部 | 東京支部 |
出身地 | 東京都 |
アウト屋のみならず、艇界のレジェンドと言っても過言ではない「阿波勝哉(通称:アワカツ)」。
進入が1コースであっても平然と6コースへ回り、0台のスタートを決めて捲りきる。その姿は多くの競艇ファンを魅了し、最も人気のある6コースの番人です。
1996年に多摩川競艇でデビューし、2005年には常滑競艇で笹川賞(SG)に出場。その後も数々のレースで”記憶”に残る結果を残し、今現在も「ミスターチルト3度」として愛されています。
阿波勝哉が「アウト屋」として歴史に名を刻んだのは、やはりこの偉業でしょう。
「6コースから9連勝」という半端ない記録!
一般的に6コース進入時の勝率は3%程度と言われているので、9連勝するのがどれほど凄いことか理解できるはず。
しかし、そんな阿波勝哉をB級に降格させてしまう2つの出来事が起こります。
一つ目は「オーナーペラ制度の廃止」。それまでは伸び重視の調整を施していましたが、制度廃止によって本来の実力を出せなくなりました。
二つ目は、アウト屋の生命線ともいえるスタートの不調。
立て続けに3回もフライングをしてしまい、事故点の加算によって半年の休み。B2級まで階級は下がり、無収入となった時期は工事現場などで生計を立てていたそうです。
以上の逆風がありながらも、アウト屋を貫いているアワカツ。正直、艇界になくてはならない存在と言えるでしょう。
調子が悪そうでも番組にいたら買います。競艇の魅力を教えてもらった選手でもあるので、引退するまで応援するつもり
アウト界のベテラン「小川晃司」
選手名 | 小川晃司(おがわこうじ) |
生年月日 | 1968年6月20日 |
登録番号 | 3352(62期) |
デビュー | 1988年 |
身長/体重 | 160㎝/51㎏ |
所属支部 | 福岡支部 |
出身地 | 福岡県 |
阿波勝哉より前にアウト屋として活躍している「小川晃司」。
輝かしい成績を残している訳じゃありません。しかし、ほぼ全てのレースで6コースから進入し、期待以上に連対してくれる敏腕レーサーの1人。
アワカツが捲りの名手なら、小川晃司は捲り差しの名手と言っても良いでしょう。そして、小川選手の特徴として”一般的な定位置からスタートしない”のも見どころのひとつ。
上記動画を視聴すれば分かりますが、より加速をつけるために空いているスペースをフルに活用しています。このスタートをはじめて見た時は「こんなんで合わせられるのか?」と思った気がするw
忘れたころに特大万舟を提供してくれるアウト屋なので、出走表にいた場合はご注意くださいw
アウト屋のスーパースター「菅章哉」
選手名 | 菅章哉(すがふみや) |
生年月日 | 1988年7月2日 |
登録番号 | 4571(105期) |
デビュー | 2009年11月11日 |
身長/体重 | 159㎝/54㎏ |
所属支部 | 徳島支部 |
出身地 | 徳島県 |
今最も勢いのあるアウト屋といえば、艇界のガースーこと「菅章哉」でしょう。
未だ重賞制覇はありませんが、2023年9月には2節連続でG1優出の活躍。しかも、自在にチルト角度を操り、どのコースでも高い勝率を残す敏腕レーサーです。
ガースーのまくり動画は沢山あって選びきれませんが、その中でも私が一番興奮したのは以下のレース。
7戦4勝で優出した2023年の唐津G1。
インに峰竜太が構える一戦において、5コースから全艇を大まくり。ついにG1初制覇!と思った矢先、まさかのフライング。
残念な結果ではあったものの、F罰則が強化されたG1優勝戦であの踏み込み。まさに男の中の男と感じたファンは大勢いたはずです。
とにかくガースーがいる番組は面白い!SGレーサーのイン戦でもオッズも激割れするので、舟券的にも勝負しがいのあるレースだと思いますw
「澤大介」※アウト屋卒業
選手名 | 澤大介(さわだいすけ) |
生年月日 | 1972年8月30日 |
登録番号 | 3852(79期) |
デビュー | 1988年 |
身長/体重 | 160㎝/52㎏ |
所属支部 | 三重支部 |
出身地 | 三重県 |
阿波勝哉に次ぐアウト屋として注目されていた「澤大介」。
6コースからの進入時、スタートタイミングの平均が”0.11”という時期もあったほどの実力者。唯一無二の優れた才能を持つアウト屋と言って良いでしょう。
実は、ボートレーサー育成所(やまと学校)ではアワカツと同期生。同期にアウト屋が2人もいるなんて…。ひょっとしたら、お互いを意識し合っていたのかもしれませんね。
そんな澤大介選手が大外6コースから捲って勝利する映像がこちら。
「インコースが圧倒的有利」を根底から覆す姿、男の私でも惚れ惚れしちゃいます!
当たり前のように0台のスタートを決め、全艇を捲る姿はまさに芸術。しかし、持ちペラ制度の廃止はアワカツ同様、徐々に成績不振へ繋がっていきます。
確かに、廃止した理由(実力で競わすため)は納得できますし、廃止後のレースも十分楽しめています。でも、ペラで差別化を図っていた選手にはあまりにも気の毒。
まぁ、賛否ある議論なのでこの辺にしておきますが…
そんなこんなで、澤大介の一撃捲りを見る機会は減っていき、もう終わりか?と感じた頃、後輩「坂口周」のユーチューブ動画において・・
「アウト屋卒業しようかな」とまさかの重大発表が…。
当然、競艇ファンからは「卒業しないでくれ!」といったコメントで溢れると思いきや…
良い判断やと思う
正直言えば持ちペラじゃない6コースには限界ある
この人ははすごい人。勝てない時、阿波さんのアドバイスでアウト屋になり持ちペラが終わり時代の中でもがきながらまた新たな挑戦を覚悟しそれを一生懸命に琢磨するであろう人。
人が何かを変えるとき、新しいとことを始めるとき、やっぱりすごくかっこいい。不安とかもろもろあると思うけど輝いてる。
持ちペラ制度が廃止された今、ファンたちもアウト屋でい続けるのが辛いのは理解しています。もちろん私も、これまで以上に応援させていただきます。
女子初のアウト屋「堀之内紀代子」
選手名 | 堀之内紀代子(ほりのうちきよこ) |
生年月日 | 1979年9月9日 |
登録番号 | 4011(84期) |
デビュー | 1999年5月13日 |
身長/体重 | 158㎝/46㎏ |
所属支部 | 岡山支部 |
出身地 | 岡山県 |
男子選手でも難しい”チルト3度”を巧みに操る「堀之内紀代子」。
阿波勝哉、小川晃司といった生粋のアウト屋ではありません。ただ、節間全てチルト3度で挑むこともあり、女子史上初の試みだと思います。
堀之内選手が凄いのは、ただアウトコースから進入するだけでなく、A1級トップクラスの成績を残すところ。
上記動画は”全レースチルト3度”で挑んだ蒲郡のヴィーナスシリーズ。「堀之内紀代子」の名を競艇ファンに知らしめたレースです。
レース映像をご覧の通り、進入したのはほぼ6コース。
その過酷な状況において1着を量産し、堀之内一色のレースとなりました。準優で敗れはしましたが、終わってみれば圧巻の成績。
「5,6コース進入」したとは思えないヤバすぎる着順。
しかも、これだけのスタート力・旋回力がありながら、直近のイン勝率は7割を超える安定感。コース問わず実績を残せる”万能型レーサー”としか例えようがありません。
唯一足りないのは重賞制覇のみ。まぁ、今の調子を継続すれば、達成するのは時間の問題でしょう!
競艇界を盛り上げた歴代のアウト屋たち
上記に紹介した選手以外にも「アウト屋」としてファンを魅了した選手がいます。
既に引退していますが、競艇ファンの記憶から消さないためにも紹介させていただきます。
向義行(2000年引退)
選手写真 | |
名前(登番) | 向義行(2327) |
生年月日 | 1948年08月15日 |
身長/体重 | 162㎝/不明 |
所属支部 | 佐賀支部 |
2007年(平成19年)、大村競艇の殿堂マイスターにも選手された「向義行」選手。
通算勝利数1,523回、生涯勝率6.06、優出182回、優勝50回、G1優勝1回、G1優出11回。
ほぼ6コース進入にも関わらず通算1,500勝を達成し、津競艇で開催されたGIレース「施設改善記念(現ダイヤモンドカップ競走)」にて、記念タイトルを獲得しています。
2000年に競艇選手を引退しましたが、記憶に残るアウト屋としての功績は今でも語り継がれています。
能登屋亮一(2002年引退)
名前(登番) | 能登屋亮一(3147) |
生年月日 | 1963年1月22日 |
身長/体重 | 161㎝/不明 |
所属支部 | 埼玉支部 |
20年ほど前に競艇界を去った「能登屋亮一(のとやりょういち)」元選手。
アウト屋は助走を合わせづらい分、どうしてもフライングが多くなってしまうもの。しかし、能登屋選手は引退するまでに僅か5回(出遅れ1回)してしておらず、抜群のスタート感覚を持ち合わせていたようです。
そして、1999年2月に開催された江戸川競艇の関東地区選手権。優勝戦で.09の好スタートを決め、記念レースで初優勝を果たしています。
吉岡修(2008年引退)
選手写真 | |
名前(登番) | 吉岡修(2964) |
生年月日 | 1959年2月5日 |
身長/体重 | 160㎝/60㎏ |
所属支部 | 山口支部 |
阿波勝哉、小川浩司などがアウト屋になるきっかけの「吉岡修(よしおかおさむ)」元選手。
1980年に選手登録され、1ヶ月程度で初勝利をあげてしまう才能の持ち主。常に大外の6コースへ進入し、2008年の引退までに通算1,000勝を超える輝かしい成績を残しました。
個人的な妄想ですが、圧倒的に不利な”アウト屋”を選択しなければ、SGで活躍する選手になっていたはず。
ただ、そんなことお構いなしに6コースから一撃まくりする有志は、記録よりファンたちの記憶に残っていると思います。
後藤道也(2012年引退)
選手写真 | |
名前(登番) | 後藤道也(3244) |
生年月日 | 1964年6月14日 |
身長/体重 | 163㎝/58㎏ |
所属支部 | 三重支部 |
1986年5月にデビューして以降、G1およびSGへの優出を果たし、2010年には通算1,000勝を達成した「後藤道也」選手。
スタートの安定感がずば抜けているアウト屋の1人。実際に走っているレースを何度も観戦しましたが、コンマ0台から一撃まくりを決める姿は本当にかっこ良かった!
通算戦績は、出走6,403回、勝利1,084回、優出111回、優勝13回と輝かしい記録を残し、生涯獲得賞金は5億5千万円を超えています。
アウト屋の魅力が分かるレース動画
「アウト屋の魅力」を理解してもらうのは、実際のレース映像を見てもらうのが一番!
という訳で、ユーチューブに公開されている動画から、個人的に忘れられないレースをピックアップさせてもらいます。
澤大輔・阿波勝哉・小川浩司など個性派揃い
若松競艇で開催された、個性の強い競艇選手しか出場できない「個性派王決定戦」。
このレースはなんと、艇界きってのアウト屋3人が出走したドリームマッチ。
1コース小川浩司、2コース澤大介、3コース阿波勝哉、アウト屋を敢えてインコースに配置。これほどウキウキするレースは滅多にありませんw
まず、ピット離れのシーンが面白すぎる(笑)4,5,6号艇は通常通り発進している中、アウト屋たちはそんなのお構いなし。しかも、先輩の小川選手が特等席の6コースを陣取り、後輩は4,5コースへ。
アウト屋が勝てば最高でしたが、さすがにA1級の強豪ぞろいでその願いは届きませんでした。
4コース阿波勝哉、5コース小川浩司、6コース吉岡修
大村競艇で2006年に開催された公営ジャーナル杯(スペシャリスト特選)。
「元祖アウト屋」の吉岡修(引退)が6コース、ベテランの小川浩司が5コース、この中では最年少の阿波勝哉が4コースで、年功序列の進入隊形。
そもそも枠なりがその通りになっていたので、番組マンが機転を利かせたのでしょう。
スタートはほぼ横並びとなりますが、アワカツが4コースから捲り差しを決めて1着!さらに、展開をついて小川が最内差しで3着。見事にアウト屋の強さを見せつけてくれました。
決着は「4-2-5」と大荒れ。ではなく、実際の配当は12倍。当時、彼らがどれほど人気だったのか分かりますね。
「イン屋」vs「アウト屋」の攻防に笑いが止まらんw
上記でも紹介した「個性派王決定戦」のレース映像です。
このレースの見どころは何といっても「イン屋 vs アウト屋」それぞれの動き。とりあえず出走表から紹介すると…
1,2,3コースにはアウト屋の代表格、4,5,6コースにはイン屋の代表格。
舟券を実際に購入していたものの、そんなことよりイン屋たちの攻防と、アウト屋のスタートタイミングがどうなるのか?それしか気にしてませんでしたw
結果、西島が2コースから1着、鈴木が3コースから2着、阿波が5コースから3着。こんなのサイコロを振らないと予想できませんよね。
普段はイン屋をあまり好きではありませんが、このレースに限っては終始笑顔で観戦させてもらった記憶があります。
阿波勝哉・澤大介の感動秘話
やまと学校(現ボートレーサー育成所)の79期生として同期の「阿波勝哉」と「澤大介」。
実はこの2人にはあまり知られていない秘話があり、アウト屋として現在の地位まで上り詰めた経緯を知ることができます。
持ちペラ制度の廃止などの影響で「アウト屋卒業」を発表した澤大介ですが、競艇ファンなら心にグッとくる動画だと思います。
まとめ
勝率が9割を超える選手がいるほど、インコース(1コース)は有利と言われています。
その環境下で、意図的に大外6コースへ回り、全速ターンで捲って1着を狙うアウト屋。その存在を知ると、競艇の楽しさが倍増すること間違いなしです。
ただ、何度もお伝えしている通り、アウト屋にとっては成績を残しにくい時代。
澤大介は卒業、小川晃司・阿波勝哉は成績不振が続いており、このまま貫き通すのは難しくなるかもしれません。
抜本的な制度改革がない限り、アウト屋という存在自体が消滅する日はきっとくるはず。それでも、現在はまだアウト屋の有志を見ることができるので、皆さんの目に焼き付けておきましょう!
ある意味、対照的ともいえる「イン屋」。カッコイイとは言えませんが、知っておくと舟券は勝ちやすくなるかも。
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