競艇におけるセット交換とは、エンジンパワーに大きく関わる部品(ピストン2個・リング4本・シリンダーケース)をまとめて交換すること。要は元々の素性を消し去り、別物に生まれ変わるモーター調整を指す用語です。
セット交換は以前から認められていた整備。それがなぜ、ここ最近急に話題を集めているのか?
その発端と言えるのが、2024年6月に尼崎で開催されたSGグランドチャンピオン。
同大会では24人もの選手がセット交換を実施。そして、元に戻すことが可能だったにも関わらず、全員がそのままレースを続行。さらに、優勝戦に進んだ6人中5人がセット交換していたのです。
交換後にパワーアップしたのは明らかであり、こうした事象が”セット交換ブーム”に繋がったと思われます。
セット交換するメリット
大部分の整備を行うため「一か八かの賭け」と感じるでしょうが、直近に関していえば”やったもん勝ち”というのが実態。
パッと見、同じように見えるエンジン。しかし、そもそもの素性は年によって異なり、セット交換の”当たり年 or 外れ年”が存在します。その点でいえば、今年は稀に見る当たり年なのでしょう。
ちなみに、セット交換後に使用するのは、ほとんどが素性の良かったエンジン。そうした部品と交換できるので、今年のような状況なら期待値はかなり高いはずです。
あくまで個人的な感想ですが、今年下ろされたエンジンは前回に劣っている?と感じています。
オーシャンカップはセット交換が原則禁止
2024年7月の「SGオーシャンカップ」において、シリンダーケースの交換はやむを得ない事情を除き禁止に。すなわち”セット交換禁止”となりました。
以下は、主催者のボートレース大村より発表された整備規定。
- シリンダーケースの交換は原則禁止(事故による変形等は除く)
- キャリアボデーの交換は抽選制(前検はスタート特訓の最終班終了後に実施。レース開催中は随時抽選)
セット交換はできなくなったものの、キャリアボデーの交換はOKとのこと。ただ、これまでのように任意で選ぶことはできず、運任せとなる抽選制にしたようです。
なお、キャリアボデーは開催中1回のみ交換が認められ、元の状態に戻すことは可能。
セット交換禁止に対する声
選手側から相当な意見があったんやろね
— ナイスマン五郎 (@niceman5rou) July 22, 2024
動きの遅い業界にしてはかなり迅速な措置
わけわからない事言ってんなと思ったら大村も新モーターか。
— くーま (@abcdef5186) July 22, 2024
そりゃあ賛成。
この前のグラチャンはひどかった。
でも一番悪いのは最近のヤマト発動機がクソモーター量産してる事にあると思う。
各場が、エンジンバラして部品ごとで保管すれば問題なしだと思うけど。前節、超抜機なんかは、そのまま使われるとそりゃいいに決まってるしね。まっ、おろしたてのエンジンだからそうなるのも分かるけどね。
— ひろぽちゃ6号艇 (@hiropocha6) July 22, 2024
セット交換禁止にしたら下位モーターの人の底上げするの絶望すぎん?逆に不公平になりそう
— げん (@YP5f5DHad3OQvVB) July 22, 2024
ペラもダメ。シリンダーもダメ。
— 雪景色 (@yukigesiki503) July 22, 2024
もう、整備技術の意味がなくなった。
はぁ?なんのために?
— あとう (@M2DAx3XonVJuzJm) July 22, 2024
カスモーターを仕上げるのも腕やし、整備の上手さで成り上がってきた選手が一方的に不利になるだけで公平もクソもないやろ
舟券的にも、整備の上手い選手が悪いモーターを引いた時は調整があってくる3日目以降が狙い目だったりとかもあるのに
肯定するファンが多いと思いきや、意外と否定的な声も散見されます。
正直なところ、どっちが正しいのか現段階では分かりません。まずはオーシャンカップで試してから判断するのが適切かと。実際、グラチャンはちょっと酷かったですし…
松井繁はセット交換に猛反対
競艇界を長らくけん引してきた絶対王者「松井繁」。グラチャン終了後の7月3日、セット交換について以下のように話しています。
いいエンジンの部品を取ってくるのだから、良くなるのは当たり前。
あんな恥ずかしいことできへん。良くなることが分かっててやれる気持ちが分からん。SG用に良いエンジンを残す必要なんかない。あんなもん、整備でも何でもない。
引用元:マクールnote
かなりご立腹の様子。艇界のドンからこんな発言をされたら、施行者だって何かしらのアクションを起こさざるを得ないでしょうw
これが整備規程変更のきっかけになったかは不明ですが、少なくとも後輩選手のセット交換抑制に影響しそう。
松井繁はグラチャンで準優敗退。ましてや、優出者5人がセット交換だったことにムカついていたのかも…
大村SGにのみ適用
上記に紹介した追加の整備規定は、2024年オーシャンカップに限った内容です。
ただし、セット交換について業界内外で大きな問題となっているため、近い将来、全ての場で採用されるかもしれません。