競艇は実力と結果がすべての世界。あまりに成績が悪い場合は収入減だけでなく、ボートレーサーの資格そのものを奪われてしまう厳しい業界。
その能力を査定し、引退勧告の基準となるのが「4期通算」というルール。
ネット上にも選手のクビに関わるワードとしてよく出現しますが、具体的にどのようなルールなのか?
そこで今回は、理解していない人の多い「4期通算」について、引退の対象となる基準をはじめ、クビ回避を目指す選手の対応策などを詳しく解説していきます。
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競艇界における4期通算とは?
4期通算とは、1期(6ヵ月)の勝率や事故率を4期分合算し、通算成績が基準を下回ると引退勧告となる競艇独自のルール。
全レーサーの成績を審査する「期」
競艇における「期」は6ヵ月。前期(5~10月)と後期(11月~翌年4月)に分けられ、各期の勝率や事故率が級別審査に反映されます。
よって、期末は毎年4月末と10月末の年2回。期が変われば勝率やフライングの累積がリセットされます。また、成績次第で来期の級別が決まるケースも多いことから「競艇の一番長い日」と言われています。
4期通算は連続する過去2年分の合算値
4期通算の対象は「過去4期分に出走したレースの成績」。4期は連続する期間でカウントされ、いわゆる良いトコ取りはできません。
ただし、成績を気にする必要がある選手は、実力的に底辺階級にいる選手たち。「選手のクビを切るため」に存在するシビアな算定基準として使われています。
4期通算で引退勧告となる条件
競艇選手は過去4期分の成績が基準を満たさなかった場合、現役引退の可能性が浮上します。正しくは「引退勧告」と呼ばれ、レースへの斡旋が止まることで自ら引退せざるを得なくなります。
具体的にどのような基準が設けられているのか?クビの対象として規定があるのは以下の4つ。
4期通算勝率が3.80未満(登録33年未満)
一般にクビのボーダーと呼ばれているのが「4期通算勝率」。
低勝率が続くと技量不足とみなされ勧告の対象になります。目安は4期通算勝率3.80未満。かつては3.50未満でしたが、ルール改正によって2016年秋から3.80に引き上げられました。
3.80は一般戦の着順点なら4着(4点)平均で超えられる数字。5着(2点)や6着(1点)が並んでしまうと現役続行のピンチを迎えます。
4期通算ボーダーを下回った選手が引退勧告の候補。後に紹介する「1600人枠」を超過する人数分について、勝率ワーストの選手から順に引退危機となるのです。
4期通算勝率が4.80未満(登録33年経過後)
あまり知られていない条件ですが、デビュー33年が経過した選手については4期通算勝率のボーダーが「4.80」に上がります。
キャリア33年といえば多くの選手が50歳前後。A2級のボーダーが5点台前半であることを考えれば、B1級でも生き残るのが難しいかもしれません。
この制度には「厳しすぎないか?」といった声も。
登録33年以上で4期通算4.80で足切りってのは、はなかなか厳しいよなぁ。このままでは来期末には更に名だたるベテランが姿を消しかねないわけで…悲しいな
— ちくわぶ (@valentine3674) November 5, 2022
デビューする新人選手の数だけ去っていく者がいるという現実。レース場が限られているので仕方ないですけど…
4期通算の事故率が0.7以上
事故率は「事故点の合計÷出走数」で出される数字。
4期通算の場合は「4期分の事故点合計÷4期分の出走数」で計算され、4期目終了時点で「0.7」に達していれば勝率に関係なく引退勧告がなされます。
事故点の詳細は以下の通り。
事故 | 事故点 |
---|---|
優勝戦でのフライング・出遅れ | -30点 |
優勝戦以外でのフライング・出遅れ | -20点 |
妨害失格 | -15点 |
選手責任の失格・欠場 | -10点 |
選手責任外の失格・欠場 | 0点 |
不良航法・待機行動違反 | -2点 |
例えば、Fを1本切るとその後29走を無事故で走らなければ0.7を下回らず(20÷29=0.6896…)、B級クラスの出走数ではかなりの重荷となるケースも。
実力下位の選手は特に、事故リスクを回避しながら勝率をキープしなければならない状況に追い込まれます。
4期通算の出走回数が60回未満
競艇選手には「最低出走回数」の義務も設けられています。
級別審査では半年間の出走回数が50回に達しなければB2級陥落。そして、4期通算で60回に届いていない選手はクビの対象に。
自己都合による欠場やあっせん拒否などが重なり、レース出走回数が極端に減ってしまうとクビを言い渡される可能性も大きくなります。ただし、公傷や産休、選手会の要職にいる選手などは対象外です。
4期通算勝率の適用ルール
4期通算勝率は選手会で定められた「競走の公正確保及び競技水準の向上化に関する規定」に基づく制度。級別審査の勝率と一部算出方法が異なる部分もあります。
各選手の4期通算勝率はどのように計算されるのか?「引退勧告=クビ」が決まる条件についてもここで整理しておきましょう。
級別審査の計算方法と少し違う
4期通算勝率は「連続する4つの期」であること、そして「4期分全レースの着順点合計÷4期分の出走レース数」で計算することが大きなポイントとなります。
各期の勝率は小数点以下第3位を四捨五入するので、勝率を足して4で割った時と比べて最大0.01程度の違いが生まれるケースも。
過去に0.01で級別審査の運命が変わった例は山のようにあることから、僅かな数字が選手生命の明暗を分けるケースも少なくありません。
「1600人枠」の定員を超えた場合
競艇界では毎年新人のデビューとベテランの引退によって選手の入れ替えが行われます。
しかし、任意引退の選手が新人より少なかった場合、競艇選手の定員として決められている「1600人枠」をオーバーしてしまうことがあるのです。
この「1600人から漏れた分」について、4期通算勝率のボーダー(3.80、4.80)を下回った選手の中から勝率が悪い順にクビが適用されるルール。
引退勧告は級別審査の期末(4月末・10月末)に決定します。
新人選手は「1600人枠」にカウントされない
4期通算勝率ボーダーに届かなかった選手全員が即引退となるわけではありません。とはいえ、登録33年経過後の4.80が高水準であることから、2022年秋にはベテランに大量のクビが発生してしまいました。
ベテランに厳しすぎるルールに対して選手から異論が続出。これを受けて2023年3月の理事会で「期末時点の選手数に、次の期にデビューする選手を加算しない」ことを決定。
新人選手は毎期平均20名程度。この分のマイナスが1600人枠を緩和したので、4.80ボーダーで引退するベテランは減る見込みです。
新人の4期通算勝率適用時期
デビューからしばらくは大外6コースからのスタート。勝率が上がらない中ですぐ引退勧告とならないよう、競艇では新人選手を守るための特別なルールが設けられています。
デビュー3年以内の選手は適用外
競艇の世界では「デビューから3年に満たない選手」を新人として扱います。この期間は成績査定において引退勧告の対象から外す措置が取られます。
最初は出走機会の少ないB2級かつ大外6コース進入。当面は見習い期間としてレースに参戦することから、デビューから3年に相当する6期分の成績は代謝制度の材料に含まれません。
強制的に引退させる「代謝制度」は他の公営競技にもあります。
新人選手は最短5年でクビ
競艇選手はデビューから丸3年で新人の肩書きが外れます。
その後、4期分の成績が満了するまで通常2年。よって、4期通算勝率のルールが適用されるのはデビューから5年が経過した時点であり、最短ならこのタイミングで退会勧告となります。
競艇ではキャリア4年目が一人前のレーサーとしての戦いがはじまる時期。4期通算の適用に含まれることは、トップ選手と対等な立場で戦う厳しい環境に飛び込む第一歩といえるでしょう。
4期通算を逃れる「49走止め」とは?
現行のルールを活用し、クビを回避するために使われるのが「49走止め」という手段。
原則「半年間50走」で1期分カウント
選手の勝率に関係する「期」には例外があります。
通常は級別審査期間となる6ヵ月を1期として計算しますが、期の出走回数が50走に満たない選手は「1期分に相当しない」とみなし、4期通算を先送りできるルールとなっています。
50走に達するとその期の勝率がそのまま「1/4」の数字に。勝率が極端に低い選手には大きな痛手となるため、期内のレースを49走以下でストップして期末までレースは欠場。
この回避策が「49走止め」と呼ばれているものです。
次期と合計して50走に達したら「1期」になる
49走止めをすると次の期も継続して勝率が計算され、50走に到達した期の期末をもって1期の勝率が確定。それ以降の出走レースは2期目の勝率として計上されます。
2期分を1期としてカウントできることから、一応挽回のチャンスを得ることはできます。
しかし、49走止めで安心できる猶予はそれほど長くありません。50走に届くことが確実となれば、期末まで勝率を下げずに走り切ることが求められます。
出走数調整は限界あり
勝率の引き延ばしができるのは現実的に1期先の2期分となるため、4期通算で考えると最長で8期分(2年間)。4期通算の出走回数が60回に満たないと引退勧告の対象となるので、それ以上の引き延ばしは難しいでしょう。
レースへの出走を控え続けても逃げ切れないルール。また、レースに出なければ賞金を稼げない悪循環となるので、50走到達に踏み切るタイミングは必ずやってきまます。
引退と向き合う選手の選択
特に関心が高くなるのは「49走止め」をするかしないかの選択。引退のリスクを背負いながらどのような形で現役を続けていくのか、判断はそれぞれに分かれます
そして、選手の心理にも関係することから、舟券予想の参考にできる部分もありそうです。
復活に賭ける「49走止めの選択」
49走止めを選択したレーサーの多くは、復調を目指す前向きな理由があると考えるべきでしょう。
ケガ明けなどによる一時的な成績の低迷、高い事故率で攻めのレースができない選手も同様の選択が取られます。 本来の実力ならクリアできる選手の場合、無理に49走を超えず一時的な安全策を取る判断が正しいでしょう。
決断が分かれる「50走に踏み切る選択」
1期分の勝率を確定させる選手の場合、理由は大きく2つに分かれると推測できます。
1つは引退ボーダーを気にする必要がないほど「調子を大きく上げてきた選手」。次の期で大きく挽回できる見込みがあれば、50走を怖がることなく普通にあっせんを受ける判断を下せます。
出走数の抑制は級別審査にも影響するので、しっかり走れる状態であればレースにドンドン出てくるでしょう。舟券の予想においても評価を上げて良い存在となります。
対照的な理由となるのが「引退を決意した選手」。
現役続行が厳しいと自覚した場合、選手としてのケジメをつける意味で50走目に入るケースがあります。開き直った走りで舟券に絡んでくることも多々あり、穴党にとっては推すべき選手かもしれません。
引退決定後も2ヵ月は現役を続けられる
4期通算によって退会勧告は期末に決まりますが、すぐに引退となるわけではありません。
競艇の期末は4月末と10月末の2回。そこから集計作業や次期のランクに適応したあっせんなどが行われるため、新しい級別でのスタート(1月1日、7月1日)までには2ヵ月の間隔が空けられます。
これにより引退が決まった選手も2ヵ月はレース出走が可能。ベテラン選手だとラストランを告知するレース場もあります。
まとめ
今回は競艇選手のクビに大きく関係する「4期通算」についてまとめました。
事実上の引退を意味する引退勧告の基準に用いられる4期通算の数字。実質2年以上の成績をもとにクビが決まります。
ファンの期待に応えられないレーサーが淘汰されていくのは自然なことで、4期通算というルールは合理的な仕組みといえるでしょう。
特に4期通算勝率のボーダーは級別審査と同じく重要な数字。選手にとって期末あたりは勝負駆けとなり、大きな決断に迫られるタイミングもやってきます。
最後に、4期通算による引退は基本的に公表されません。また、引退理由として最も多いのが4期通算なのです。
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